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その他
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人工膝関節置換術

人工膝関節全置換術 (TKR)

 

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)により形成された蝶番関節です。通常、骨表面は滑らかなコーティング(関節軟骨)で覆われています。関節炎により、このコーティングが摩耗すると、関節の表面が粗くなり、痛みやこわばりを引き起こします。

 

人工膝関節全置換術では、損傷した表面を取り除きます。金属やプラスチックの部品に置き換えることによって、以下のような効果が期待できます。

 

  • 痛みの軽減
  • こわばりの軽減
  • 階段や娯楽的活動などを含めた移動能力の向上

 

従来の人工膝関節全置換術では、膝の上を7-8インチほど切開します。一般的に、3-5日の入院期間および1-3か月の回復期間が必要です。研究によると、人工膝関節全置換術のほとんどの症例で非常に良好な結果が得られております。関節炎の症状が完全または大幅に緩和され、90-95%の患者さまが術後10年以上経過しても良好な膝関節の機能を維持していることが示されています。

 

手術前の評価と運動

手術を受けられる前に、主治医からの紹介で理学療法士に会っていただき、膝の状態の詳しい評価と術後のリハビリに備えるための運動を行うことがあります。それにより関節と筋肉の機能を最大限に有効活用しながら回復を早め、より望ましい手術の結果を得ることができます。

 

合併症

以下の運動は、肺の感染症(胸部)や下肢の血栓症を予防することができます。手術後、麻酔から目覚めたらすぐにベッドの上で、1時間に一回行うようにしてください。その他の人工膝関節全置換術に伴う合併症として、神経損傷、血管損傷、表皮の感染、血腫、および人工関節のゆるみなど起こることがありますが、合併症がおこることは稀です。

 

呼吸法: 5回、ゆっくりと長く深呼吸をしてください。呼吸を繰り返す度に、前の呼吸より少しずつ深くすることを意識して、肺の底まで空気を送りこむことをイメージしながら行ってください。(5回繰り返す)

血流運動: つま先を天井に向けたまま、足首を上下に動かしましょう(ふくらはぎの筋肉の伸縮)。片足ずつ、つま先を上に向けながら、足首を時計回り、反時計回りに行ってください。

  

 

手術後の管理と運動

 

1. 腫れ

手術後、膝は熱く腫れることがあります。炎症や痛み、腫れをコントロールするために頻繁に氷を膝にあてましょう。また、包帯で圧迫することも腫れを引かせるために効果的です。理学療法士が適したアドバイスをおすすめいたします。

 

2. 歩行

一般的に、術後1日目または2日目に歩行訓練を開始します。理学療法士が患側(手術した足)にどのくらい体重をかけてよいかアドバイスをします。退院前に歩行訓練を受けて上手に歩けるようにしておくことが大切です。理学療法士は、適切な歩行補助具の選択、使用期間や歩行の改善方法を指導します。

 

歩行訓練の順序は、以下のとおりです。

歩行補助具を前方に移動させます

  • 患側(手術した足)を一歩前に踏み出してください
  • 健側を患側にそろえるか、少し前に出します

方向転換は左右どちらの方向に動いても構いませんが、手術した方の膝を捻ったり、軸にして回転しないようにします。從って、小さな歩幅で一歩ごと足を持ち上げて行いましょう。膝がひどく腫れない程度に、徐々に距離と速度を増しながら、歩行力の向上を目指していきます。腫れがひどい場合は患部に氷をあてて冷やすか、氷をあてながら足を挙上して安静にしてください。

 

3. 階段昇降

階段昇降の手順については、入院中に理学療法士が指導をします。階段の上り下りには常に歩行補助具を使用し、手すりがある場合は使用して体を支えてください。階段に手すりがない場合は、理学療法士にお知らせください。

上り

  • 健側(手術していない方の足)で一段上がりましょう
  • 患側(杖/松葉杖と一緒に)は、合わせるように一段上がります

下り

  • 患側の足を下段におろします(歩行補助具の横に)
  • 健側の足を(杖/松葉杖と一緒に)下段におろしてください

 

4. 移乗

座る時

  • 椅子が近くに置いてあることを足で触れて確認します
  • 両足を開いてください
  • 患側の足を滑らしながら、少し前方に出します
  • 腕と足で体を支えながら、ゆっくり座ってください

 

立つ時

  • 足のかかとを椅子の脚に近づけます
  • 両足を開いてください
  • 患側の足を滑らせながら、少し前方に出します
  • 椅子の肘掛けを使用して、健側の足と腕の力で立ってください

 

5. ひざまずき動作

術後数か月間は、膝を床につくことは控えるべきですが、その後は、許容範囲であれば、跪いても問題ありません。ただし、正座がしにくいと感じたり、不快感が出るということから、ひざまずき動作ができないと思われる方は多いです。

 

6. 更衣・着替え

着替える際は、椅子またはベッドに座ったまま行ってください。更衣のコツとして、履くときは患側の足から履き、脱ぐときは健側の足から脱ぐとラクに行えます。靴は、ヒールが低くて、適度なクッション性がある(靴ひもがないスリップオンスニーカー)といったものがおすすめです。締め付けるコルセットの使用は、控えましょう。

 

7. 運動

退院後は、入院中に理学療法士から教わったすべての運動を続けてください。これらの運動は、膝がかたくなるのを防ぎ、且つ筋力が確実に強化し続けるために必要です。

 

運動

以下の運動は、1日3回、少なくとも12週間行ってください。理学療法士の指導の下で、手術前および術後に行いましょう。これらの運動は、膝の可動域と強度を高めることに効果的です。

Please note: these exercises may worsen your pain initially.

Pain following a knee replacement remains for many weeks and is normal for everyone. Take pain killers before you exercise to try and reduce the after-effects.

 

 

ヒールスライド(ベッド上での膝屈曲)

ベッドの上で、踵をお尻の方向に滑らせながら膝を曲げて、踵を元の位置に戻します。運動中は、常に膝蓋骨を天井に向けて行ってください。踵の下にプラスチックシートを敷くと滑りやすくなります。(10回繰り返す)

 

 

ヒールスライド(座位での膝屈曲)

椅子に座り、片足の下にタオルを置きます。踵を滑らせながら後ろに引いてください。その際、膝の前方が引っ張られる感覚を感じるまで引きます。そのまま20秒以上保持します。(10繰り返す)

 

 

太腿の引き締め(大腿四頭筋セッティング)

膝裏をベッドに押しつけるように、太ももの前方(大腿四頭筋) に力を入れます。そのまま5秒間保ち、力を抜いてリラックスします。(10回繰り返す)

  

足上げ運動(SLR) 

太ももの前方(大腿四頭筋) に力を入れて、足のつま先を引き上げながら足を伸ばします。膝をまっすぐ伸ばしたまま、足を数センチ持ち上げて、ゆっくりと下ろしてください。(10回繰り返す)

  

仰向けで(膝屈曲運動)

膝の下にローラーを置いて、膝をを軽く曲げます。太腿の前方(大腿四頭筋)に力を入れて、足とつま先を引き上げながら、膝をまっすぐ伸ばします。5秒間保ち、ゆっくりと力を抜いてリラックスしましょう。更に強化したい場合は、足首に重りを装着してください。(10回繰り返す)

 

膝の伸展ストレッチ

写真のように、座った状態で患側の足をもう一つの椅子の上に置きます。膝をまっすぐ伸ばしたまま、20秒以上、保持します。(10回繰り返す)

 

膝とハムストリングのストレッチ 

座った状態で、足を前にまっすぐ伸ばします。体を前に傾けて、両手を使いながら膝をまっすぐ伸ばしてください。20秒以上、保持します。(35回繰り返す)

 

 

座りながら蹴る(膝の屈曲運動)

椅子に座ります。太ももの前方(大腿四頭筋)に力を入れて、足とつま先を引き上げながら膝をまっすぐ伸ばします。5秒間保ち、ゆっくりと力を抜いてリラックスしてください。(10回繰り返す)

 

ぶら下がり/スイング端坐位

ベッドに座り、床につかないように足をおろしてください。膝を曲げて、軽く反発する感覚を意識しながら、ふくらはぎを前後に振ります。1回あたり2~3分間行ってください。

 

膝の屈曲(うつ伏せ)

太ももの下にタオルをひき、お腹を下に向けてうつ伏せになります。膝をできるだけ最後まで曲げてください。そのまま20秒間保持します。(3~5回繰り返す)

 

 上級練習(立位)

立った状態で行う上級運動に関しては、理学療法士または医師の指導の下で行ってください。

 

日常生活について

運転は一般的に、手術後6-8週間から可能ですが、まずは主治医に相談しましょう。仕事の復帰は一般的には、術後6-12週間からできることが多いです。ただし、職種と通勤の交通手段によって異なる場合があります。大手術の影響で、疲れやすいかもしれませんが、徐々に数か月にわたって体力は回復していきます。

 

スポーツについて

ウォーキングやジョギングは人工関節に負荷がかかる面(摺動面)を摩耗しやすいことから、控えておいたほうが良い運動とされています。患者さま個々の状態によって異なりますが、関節を人工物に置き換えるという性質上、インプラント材料の寿命を考慮して運動を慎重に判断してください。水泳およびウォータースポーツ、サイクリング、エアロバイク、クロスカントリースキー(クロストレーナー)は、人工関節の素材に過度の磨耗を生じさせることなく高レベルな心機能や筋力トレーニングとしておすすめです。

 

上記の情報は、カノッサ病院(カリタス)の理学療法部で制作されています。

理学療法のご予約には、28255392にお電話ください。

 

参考文献:

  1. Royal National Orthopaedic Hosptial (NHS Trust): A Patient's Guide to Total Knee Replacement (2011). rnoh.nhs.uk
  2. allinahealth.org/Health-Conditions-and-Treatments/Health-library/Patient-education/Total-Knee-Replacement/After-surgery/Knee-exercises
  3. brochures.mater.org.au/brochures/mater-hospital-brisbane/total-knee-replacement